塾講師からのご提案
一日分の賃金額を計算する場合、月々の所定労働日数が異なると賃金額に差が生まれます。
所定労働日数の多い月と少ない月では、一日分の賃金額が違ってくるわけです。
その異なる一日分の賃金額に従って賃金カットをしようとすると、当然問題が出てくるわけです。
具体的に計算してみましょう。
月に二五万円支給されている人の場合、三月の一日分の賃金を計算してみると、こうなります。
一カ月の暦日数がばらばらであり、日給・月給制の支払い形態をとっている以上、やむを得ないことなのです。
さてそこで、月給制による賃金を年間賃金の三分の一と考えてみれば、年間の所定労働日数をベースにして一カ月あたりの平均所定労働日数を計算の基礎とする方法もあります事実こうした方法は、月による差異の不合理性、事務手続きの煩雑さをなくす上からも多くの企業で採用されています。
この方法に従って一日の賃金額を算出し、賃金カットを実施することは、一方的に労働者が不利益を被らない限り差し支えないといえます。
いずれにしても、賃金カットは、欠勤したことに対する当然の行為とはいえ、労働者の生活に大きな影響を与えることになりますので、カット額の計算には細心の注意を払う必要があります。
今まで月の二十六日から翌月の二十五日までを賃金算定期間とし、末日を給与の支払日と定めていたある企業が、十六日から翌月の十五日までを賃金算定期間、二十日を支払日に変更することにしました。
その企業には、月給者もいれば、日給月給者、日給者、パート・アルバイトもいます。
月給者以外の者にとっては、一時的に二六日起算日の一五日締切日となり、労働日数が減り賃金が減額してしまいます。
このような、一部の労働者に不利益になるような締切日の変更はできるのでしょうか。
これを労働基準法上から考えてみると、1項で述べた「賃金支払五原則」に従っているかどうかということが問題になります。
月給者以外の賃金が減ってしまう。
一時的に賃金締め切り期間が短くなったことによって賃金額が減少します。
賃金支払期間が暫定的に短くなったための結果であって、このために全額払いがなされていないとはいえません。
賃金の全部もしくは一部を控除して支払った場合に労基法違反となるのであって、この場合は、単に締切日と支払日の移動にすぎないわけです。
したがって、これも問題ありません。
次に「毎月一回以上払い」です。
「毎月」とは暦上のことですから、毎月一日から末日までの間に少なくとも一回は賃金を支払わなければならないことになります。
支払い期限についても、不当に長い期間でない限り、ある月の労働に関する賃金を必ずしもその月のうちに支払わなければならないということではありません。
これも問題なしです。
最後に「一定の期日払い」です。
「一定の期日」とは期日が特定されるとともに、その期日が周期的に到来するものでなければなりません。
通達では「賃金の支払日は、労働協約や就業規則によって自由に定め、又は変更できる」としていますので、手続きさえすれば一度決めた期日は変更することはできない、というものではありません。
結局、「賃金支払五原則」に関していえば、締切日の変更はなんら問題がないということになります。
ただ、労働者が一時的にせよ困る事態も生ずるわけですから、もし締切日を変更する場合は、あらかじめ告知しておくことが望まれます。
使用者が、通常の労働時間または労働日の賃金額の二割五分以上の割増賃金を支払わなければならないのは、時間外労働をさせた場合、休日労働をさせた場合、深夜労働をさせた場合、の三つの場合です。
使用者は、それぞれの定めに従って賃金を支払えばいいわけですが、問題は重複した場合の支払いです。
三つの場合が重複することがあり得ますが、重複した部分について割増率がどれだけになるのか、すなわち二割五分だけでいいのか、それとも重複するごとに割増率が累積加算されていくのかということが問題となってきます。
労働基準法の施行規則二○条には、「時間外労働あるいは休日労働と、深夜労働とが重複した場合、割増率は五割以上でなければならない」とされています。
「休日労働も時間外労働も本来労働しなくてもよい日または時間の労働であって、いずれもいわゆる時間外労働であるから、質的に異なる労働ではなく、割増の原因も別個とはならない。
したがって、休日労働と時間外労働が重複しても、割増率は二割五分以上でよい」という考え方です。
「週休制と八時間労働制は制度の目的が異なっており、休日を潰して働くことと、一日の労働時間を延長して働くこととは、質的に全く異なる労働である。
したがって、割増の原因も別個となり、割増率は累積して加算すべきである」という考え方です。
また、休日労働に時間外労働の概念を認めないと、休日には何時間働かせてもよいということにもなる、という意味合いもあります。
行政解釈では、「三六協定において休日の労働時間を八時間と定めた場合、割増賃金については、八時間を越えても深夜業に該当しない限り二割五分で差し支えない」と働とが重複した場合の特別の規定はありませんが、二割五分以上でよいとする考え方と、五割以上でなければならないとする考え方の二通りがあります。
三つが重なった場合でも、割増賃金はイの考え方に従って支給すればよく、休日に残業した時の賃金について、一・五倍支給する必要はありません。
就業規則に、「休日に残業したとき、一・五倍支給する」旨が記載されていれば、当然、それが優先されますので、一・五倍支給する義務が生まれてきます。
結局、結論としては簡単で、就業規則で特別な規定を設けない限り、二割五分増し以上であれば、いくらでもよいということです。
労働基準法によって、時間外割増賃金の支払いを要するのは、法定労働時間を超えて労働させた場合と規定されています。
したがって、遅刻をした者がその日に終業時間後引き続いて労働した場合に、遅刻時間分を終業時間後の労働時間から差し引いて、実働八時間を超える労働についてだけ時間外割増賃金を支払うことは違反とはなりません。
従業員が始業時間に遅れて就労した場合の賃金はどう計算するのでしょうか。
この場合は、その遅刻の時間については労務の提供がなされていないわけで遅刻時間の限度で賃金をカットすることは当然の行為です。
生活保障給にあたる家族手当や住宅手当などについては、これが賃金カットの対象となる旨の就業規則や労働協約などの規定が定められていなければ、カットすることができません。
法定労働時間を超えて労働させる場合には、三六協定の締結ならびに協定の行政官庁への届け出が必要です。
また法定労働時間を超える労働については、その時間について通常の労働時間の計算額の二五%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。
割増賃金を支払わなければならない時間外労働とは、就業規則や労働協約で定めている終業時間を超える労働ではありません。
労働基準法に定める労働時間を超える労働の場合なのです。
就業規則で所定労働時間を七時間と定めているのは、一時間余分に労働させた場合でも、割増分を支払う必要はないわけです。
整理しましょう。
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